狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
美桜は尊に全てを委ねるためにもゆっくりと瞼を閉ざそうとしていた、そのとき、ベッド脇のサイドチェストに置かれている尊のスマートフォンからけたたましい電子音が鳴り響いた。
その刹那、尊から「チッ」という舌打ちが聞こえ。
「悪い。邪魔が入った」
そう言って謝罪してきた尊が美桜の身体から退いていく。
美桜は言いようのない寂しさを覚える。
どうやら仕事か何かの呼び出しのようで、尊は美桜の隣に腰を下ろすと応対をはじめた。
「はい。尊です。ああ、はい。わかります。すぐお迎えにあがります。ええ、樹里さんもあまり飲み過ぎないようにしてください。会長も心配しますので。それじゃあ」
会話から察するに、どうやら極心会の若頭としての用件らしく、すぐに出かけないといけないらしい。
だが納得できない心境でもあった。
どうして樹里さんのお迎えに、わざわざ若頭である尊が自ら出向く必要があるのだろうか。
そんな考えが頭の中を占拠していたからだ。
そうとも知らずに、尊は、さも当然のことのように、身支度のためにウォークインクローゼットへと姿を消し、しばらくするとダークスーツ姿で再び美桜の元に戻ってきて。
「この埋め合わせはちゃんとする。だからそうむくれるな」
軽口を叩く尊に、羽毛布団で身を包み顔だけ出している美桜は、思わずムッとして言い返す。
「むくれてなんかいません」