狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
ヤスに聞けば、樹里はここには住んではいないらしい。
それを聞いて余計悶々としていた美桜だったが、尊に世話係兼護衛を任せられているのだというヤスと部屋住み中の若衆ーーヒサとワイワイ騒がしく過ごしているうち次第と気持ちも晴れていった。
初見同様、黒い短髪にダークスーツ姿のヤスは尊より二つ歳が下らしいが、金髪の短髪に上下黒のジャージ姿のヒサは、まだ二十歳になったばかりなのだとか。
そのせいか口調は少々軽薄そうだが同じ歳だけあって、とても話しやすく、すぐに打ち解けることができた。
豪華な日本家屋は二階建てで、一階には常にたくさんの構成員らが出入りしているらしい。しかも男所帯。
尊には、『くれぐれもひとりでうろつくな』と口うるさく言いつけられていたので、美桜は大人しく二階の部屋で過ごしている。
部屋にずっと籠っていたのでは退屈だろうからと、いつの間に運び込んでいたのか、華道に欠かせない三点道具ーー長年美桜が愛用し使い慣れた花鋏・剣山・花器(水盤と花瓶)に、色とりどりの花材までが揃えられており、すぐに生け花に没頭することができていた。