狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

これまで華道になど馴染みのなかったのだろうヤスとヒサは、その様を物珍しそうに見入っている。

大好きな花々を前に、美桜はふたりの存在などすっかり忘れ夢中になってしまっていた。

幼い頃から愛用している花鋏は、硬い茎でも難なく切れる優れものだ。

そのためズッシリと重く、使いこなすにはコツが必要になる。

幼い頃は、そのコツがなかなか掴めず苦労したものだった。

美桜は、そんな頃があったなどと露にも思わせない手馴れた手つきで花鋏を扱い、カラー・サンシュユ・ティーリーフ・デルフィニウムらの茎の長さをバランスよく切り揃えていった。

色とりどりの花々の個性を活かして、繊細に時には大胆に、迷いなく鮮やかに生けていく。

ほわんとして見える普段とは違った美桜の凛とした姿に、ふたりは驚きを隠せないといったご様子である。

「おっとりしている姐さんも、華道となるとビシッとしてますねぇ。見違えましたよ」

「ほんとうっすねぇ、メチャメチャ格好いいっす。さっすが若が……じゃなかった。社長が選んだ姐さんっす」

 ヤスは舎弟のヒサが一緒だからか、口調にも少し気を配っているようだ。
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