狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

それでも出迎えてくれたいかにも強面な構成員とは比較にならないほど、雰囲気が明るく軽やかなふたりのやり取りに手を休めほっこりしつつも、美桜には、昨日から少し引っかかっている事があった。

 それは、どうして『若頭』である尊のことをわざわざ『社長』と呼び直しているかという点だ。

「あのう、どうしてわざわざ尊さんのことを社長って呼び直すんですか? 他の方は若頭って呼んでましたよね?」

「あー、もちろん普段は若頭って呼んでるんすけどねぇ。姐さんが怖がるといけねーから社長と呼べって、社長にキツーく言われてるんすよ。まぁ、それだけ姐さんのことが可愛くてしょうがないんでしょーねぇ」

「……え?」

ーー尊さんが、そんなことを……?

「ヒサ 、てめー、何でもかんでもべらべら喋んじゃねーよ! 焼き入れられたいんなら手加減しねーぞ!」

「さ、さーせんした」

 美桜の問いにヒサがすぐに応えてくれていたのに対し、ヤスが途中でヒサの首根っこを掴んでドスをきかせた声で凄むという、ちょっとしたアクシデントに見舞われはしたが、尊の思いがけない気遣いを知ることとなって。

 美桜は、出勤していく尊を七時半に見送ってからまだ三時間ほどしか経っていないというのに、尊のことが恋しくてどうしようもなくなっていた。

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