狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
なんでも極心会の会長であり尊の親代わりでもある櫂は、尊が極道の世界に入ることをよくは思っていなかったらしい。
『俺はお前を極道に引き入れるために引き取ったんじゃねーんだぞ。今からでもやめちまえ。お前はこんなことやってちゃいけねーんだよ。おい聞いてんのか? 尊』
だがそんなときには尊は決まって、困ったように笑って櫂のことを宥めるだけだったのだとか。
今ではもう諦めてしまっているらしいが、以前はことあるごとに、極道の世界に引き入れてしまった尊のことをなんとか説得しようとしていたのだという。
二年前、ヒサが極心会に入ってすぐの頃に、目上の構成員らが話していたのを耳にしたことがあったらしい。
いつだったかヤスが席を外した折に、極道としてだけでなく、経営者としての素質にも秀でている尊に対して憧れを抱いており、自身の目標に掲げているヒサがポロッと口を滑らせたことがあった。