狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
尊の言葉は、あたかも美桜のことが好きだと言っているようにもとれるが、美桜はそこまでおめでたい頭の持ち主ではいない。
これは、政略結婚の相手として、これから夫婦となって協力し合わなければならない、パートナーになるために必要な契約なのだ。
尊が美桜に対して抱いている感情は、美桜が尊に抱いているような淡い恋心などではない。
あくまでも人として嫌いではないと言ってるだけだ。
そうだとわかってはいても、尊に少なからず嫌われていないのだと思うと、嬉しくてどうしようもなかった。
胸がいっぱいで一瞬でも気を抜けば泣きだしてしまいそうだ。
それらをぐっと堪えた美桜は尊からのプロポーズを素直に受け入れた。
「……ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
楚々として慎ましく頭を下げる美桜の姿を認めると尊は満足げに頷いてから、美桜に声をかけてくる。
「手を出してみろ」
「……え? あっ、はい」
一瞬意味がわからずキョトンとしてしまったがすぐに意図を察して、素直に手を差し出した美桜の陶器のように白くほっそりとした左薬指に、尊がキラキラと眩い光を放つ婚約指輪を嵌めてくれたことで、尊と美桜との契約がたった今結ばれたのである。