狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
しばらくの間、尊は無言のまま美桜のことを抱きしめたままでいた。
ただそれだけのことなのだが、尊に淡い感情を抱いているせいか、この行為になにかしらの特別な意味があるような気がしてしまう。
ーーこの時間が永遠に続いてくれればいいのに。
美桜はそんなことをひっそりと願っていた。
そんな束の間の時間を経て、尊のぬくもりがゆっくりと離れていく。
おそらくソファからベッドに移動するためだろう。
その僅かな時間さえも離れたくないと思ってしまう美桜の胸に、いいようのない寂しさが込み上げる。
けれどもそれは美桜の思い違いだったと気づくことになる。
なぜなら離れていくと思っていた尊が眼前にぐっと迫ってきて、正面から顔を覗き込んできたからだ。
尊の不意打ちに目を丸くする美桜に対し、尊は意地の悪い言葉で羞恥を煽ってくる。
「俺に早く抱いて欲しいからって、そんなに物欲しそうな顔をするな」
「////ーーッ!?」
心の中を見透かしたような尊からの指摘に、美桜は全身を真っ赤にさせ身悶える。
尊は美桜の初心な反応に気を良くしたのか、してやったりというような表情を決め込んでいる。
その態度からも、尊と美桜との想いの差は歴然だ。
羞恥に塗れながらも、美桜は悔しさを覚えムッとしてしまう。
「俺の奥さんは大人しそうな顔をして、意外とよく怒るよな」
「そ、それは、尊さんが怒らせるからじゃないですかッ!」
尊の意地悪な追撃に思わず言い返していた。