狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
どんなにそう願ってみても、それは無理な話だ。
美桜は一刻も早くこの場から離れたくて、愼の横を擦り抜けていこうとするが、愼によって手首をギリと強い力で掴んで足止めされたことにより。
「おい、待てよ」
「キャッ!?」
遠い昔に思考を馳せていたせいか、気落ちしていた心が微かに浮上しかけていたというのに、痛みに顔を歪め咄嗟に短い悲鳴を上げた美桜は、厳しい現実へと強引に引き戻されることとなった。
「お前、まだ処女だよな?」
「////」
まさかそんなことを訊かれると思わなかった美桜は、全身を紅く染め慄くことしかできない。
そんな美桜の様子を見るまでもなく、処女であることを確信している様子の愼は、なおもニヤリと意地の悪い笑みを深めて、とんでもないことを言い放つ。
「いくら家の駒だからってさぁ。お前もあんなオッサンに処女捧げるのは嫌だろうし。なんなら俺が処女好きの男紹介してやろうか?」
「////ーーッ!?」
余りの羞恥に、この上なく真っ赤になって、声にならない声を上げ、その場で縮こまっていると。愼のニヤついた顔がぬっと眼前に迫ってくる。
同時に、ついさっき見せられた見合い写真の男の脂ぎった顔と愼の顔とが重なってしまう。
「////ーーヤダッ! 離してッ!」
美桜は咄嗟に愼の身体を両手で押しのけていた。