狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
それからは、尊からの宣言通り、美桜のすべてがどれほど極上であるかを言動で示され、言葉で言い尽くせないほど甘やかで刺激的かつ濃厚なめくるめく初夜を過ごすこととなった。
意識が途切れる間際、愛おしげに美桜の名前を呼ぶ尊の甘い声音と、それに劣らないくらい甘やかな優しいキスの雨が絶えず降り注いでいたことだけは鮮明に覚えている。
***
情事の後。心身ともにようやく落ち着きを取り戻した尊は、無垢な子供のように愛らしい美桜の寝顔に魅入っていた。
ついさっきまで情事に耽っていたせいで、美桜の頬も身体もほんのりと薄桃色に染まっている。
その柔肌に吸い寄せられるようにして手を差しのべ、頬にそうっと触れてみる。
餅肌という言葉通り、白くて瑞々しい肌理細かな肌はもっちりとしている。それでいてサラサラとしていて、肌触りも絶品だ。
互いの肌が触れあうだけで、しっとりと吸いついてくる。あまりにも心地がいいせいで、触れていくうちいつも夢中になってしまう。
一度触れたら最後、もう引き戻せなくなっていた。
ーーただ、助け出してやりたい。
そう思っていただけのはずだった。
それなのに……。昔の記憶など曖昧なくせに、向こうから懐に飛び込んでこようとは、なにもかも予想外だった。とはいえ、こんな事態になろうとはーー。
美桜と再会してからのこの一月のことを振り返っているうち、いつしか昔の懐かしい光景が蘇ってくる。
美桜と初めて逢ったのは、尊が高校に上がったばかりの春のことだ。
その頃、自分の子供のように可愛がってくれていた父の後妻である継母・絹代《 きぬよ》に連れられ、清風の当時の家元である弦一郎の元によく趣いていた。
絹代が華道をたしなんでいたのもあるが、弦一郎と遠い親戚筋に当たるせいだ。
その席で、弦一郎からうちの孫娘だと言って紹介されたのが当時まだ六歳の美桜だった。
だがそれは建前で、行く行くは互いの家を盛り立てるための、政略結婚の相手として引き合わされたのだ。