狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
「おいおい、これくらいのことで怖がっててどうすんだよ。さすが処女だな。否、そういうのが好きな奴には堪んねーのかもなぁ」
けれども愼は少しも堪えるどころか、あからさまに初心な反応を示す美桜のことを心底楽しげに眺めつつ、クツクツと笑いながら肩を震わせている。
昔は優しかった愼がいつの頃からか、薫と同じ態度をとるようになってからというもの、こんなふうにことあるごとに揶揄われてきたが、いつもは何を言われても右から左に聞き流してきた。
だがこの手のことに免疫のない美桜は、愼に廊下の隅に追いやられ、真っ赤になって立ち尽くし、何かを言い放つことも、ましてや反論を返すことなどできないでいる。そこへ。
「美桜さんッ?! 大きな声が聞こえましたけど、どうしたんですかッ? 大丈夫ですかッ?」
この家に引き取られて以来、身の回りの世話を焼いてくれている、使用人である麻美《あさみ》の焦った声が広い廊下に響き渡った。