狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
「……あっ、はい。ありがとうございます。ですが実はあいにく予定がありまして」
「少しぐらいいいじゃないですか。たまには、ね?」
「申し訳ありませんが、大事な用件ですので」
「そんな~、つれないな~。独身同士、仲良くしましょうよ~! たまには息抜きも必要だし。社会勉強だと思ってさぁ」
いつもなら傍に着いてくれているヤスやヒサがさり気なく間に割って入ってくれるのだが。あいにくヤスは事務所からの連絡が入ったとかで席を外しており、ヒサも若いスタッフに話しかけられているようだった。
おそらくそんな状況だからこそ、牧村はこうして話しかけてきたのだろう。
ーーいつもいつもふたりに頼ってばかりじゃダメだ。ここは毅然としなくちゃ。
そうでなければ、いくら政略結婚とは言え、極道者である尊の妻としても務まらない。
「あの、本当に今日は時間がーー」
意を決して背筋を正した美桜がキッパリと断ろうとしているところに、意外な人物から助け船が入った。