狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

 そうは思いながらも、なんだか尊に一線を画されているような気がしないでもない。

 そんな風に美桜が邪推してしまうほどに、尊は結婚してから以前とは比較にならないほど優しくなった。そのことが妙に引っかかってしまう。

 尊に散々愛されて疲れ果ててしまっているはずなのに、朝早く目覚めてしまった美桜は、いつものように尊の腕にしっかりと包み込まれていた。

 ぴったりと密着している尊の身体からは心地よい心音と穏やかな寝息とが体温と一緒にじんわりと伝わってくる。

 これも結婚前と変わったことのひとつだ。

 こうして尊の無防備な寝顔を眺めていると、本当に夫婦になったんだなと実感できる。

 なにより、尊に少しでも気を許してもらえていることが無性に嬉しくもあった。

 尊との新婚生活は思いの外甘やかで楽しいものではあったが、行為の後はいつも決まって、やるせない気持ちになってしまう。

 どんなに優しくされようとも、大事に扱ってくれようとも、所詮は政略結婚の相手なのだ。

 こうしていつまでも一緒にいられる訳じゃない。

 樹里とのことも気にはなるが、そんなことに構っている場合じゃないのかもしれない。

 尊にとって駒としての価値がある自分の価値を少しでも高めて、少しでも長く一緒にいられるように、もっともっと頑張らないとーー。
< 183 / 244 >

この作品をシェア

pagetop