狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
そんなことをひっそりと決意していると、尊が身動ぎする気配がして。
「ん? どうした? 眠れなかったのか?」
どこからともなく浮上してしまう不安な思いを胸の奥底にしまい込み、当たり障りのない返答をする。
「あー、いえ。ついさっき目が覚めて、今日の撮影でなにを着ようかなって考えてただけです」
「仕事熱心なのは感心だが、面白くないな」
「……え?」
尊からの返答には一瞬首を傾げたが。
「いや、なんでもない。それより、来週一週間、夏期休暇をもらっているんだが。どこか行きたいところはないか?」
「ーーえ!? それってもしかして、新婚旅行ってことですか?」
「ああ。そうだ」
そこにもたらされた、尊からの思いがけない提案によって、美桜の頭の中はそのことで瞬時に塗り替えられていく。
まさか政略結婚なのに、新婚旅行のことまで考えてくれていたなんて、夢にも思わなかったのだから当然だ。
日頃の疲れも、身体の気怠ささえも、嘘のように吹き飛んでしまっていて、美桜の心はもうすっかり新婚旅行へと旅立っていた。