狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

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 七月の第一土曜日。尊からの思いがけない提案により、一週間の夏期休暇を取得した尊と美桜は、新婚旅行の初日、箱根へと向かう前に、祖父の弦一郎が住む軽井沢へと赴いていた。

 賑やかな都会から離れて静かに暮らしたいという弦一郎の意向で購入しただけあり、淺間山の山麓にある静かな別荘地に位置するせいか、緑豊かでのどかな場所に祖父母の暮らす家はあった。

 格式高い立派な数奇屋門の奥には、広い和風庭園があり、その傍らにはこれまた弦一郎が憧れていたという、土いじりのできる立派な家庭菜園も設けられており、その周辺を見頃を迎えた色とりどりの紫陽花が彩っている。

 つい今しがた到着した美桜は尊と一緒に、住み慣れた天澤家の豪華な数寄屋造りの母屋によく似た趣ある純和風な平屋造りの邸宅へと脚を踏み入れたところである。

 門を潜って、綺麗に掃き清められた玄関へと脚を踏み入れた尊が引き戸に手をかけようとすると同時。

「いや~、美桜も尊くんもよく来てくれたね~!」

 ガラッという豪快な音とともに開け放たれた扉の隙間からぬっと顔を出した弦一郎が飛び出すような勢いで出迎えてくれた。

「あっ、ああ。ど、どうも」

 妻の祖父宅への訪問に心構えはあっても、意表を突かれては、さすがの尊も驚きを隠せない様子で、呆然と突っ立ったままでいる。
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