狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
「ふたりとも、そんなところで突っ立てないで、ささ早く上がりなさい。疲れただろう?」
事前に大凡の到着時間を知らせてあったせいか、弦一郎は待ちに待った孫娘夫婦の来訪を今か今かと待ち構えていたようだ。
棒立ち状態の尊の様子にもまったく気遣うことなく、尊と美桜のことを嬉々とした表情で見比べるように眺めつつ、普段から穏やかな笑みを絶やさないにこやかな丸みのある相貌をこれでもかと綻ばせている。
尊と横並びに佇んでいた美桜も、弦一郎からの熱烈な歓迎ぶりに呆気にとられていたが、ようやく我に返り慌てて挨拶を返した。
「お、お祖父さま、この度は快くお招きくださり、ありがとうございます」
「美桜、堅苦しい挨拶はよしなさい。さーさ、ふたりとも奥にお茶を用意させたからゆっくり寛ぎなさい」
だがすぐに少し拗ねたような表情の弦一郎から軽いお叱りを受けてしまった美桜は、二度目の衝撃を受けてしまう。
確かに、幼い頃から可愛がってもらっていた自覚はあったが、妻の幸代の手前、ここまであからさまに感情を態度に出されたことなど一度もなかったせいだ。