狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
美桜はふたりの会話に着いていけず、オロオロと弦一郎と尊のことを交互に忙しなく見遣ることしかできないでいる。
そうしている間にも困惑しきりの美桜のことを置き去りにして、ふたりの会話はどんどん進んでいく。
「確かにそうだが。どこかで君に会ったことがあるような気がして、調べさせてもらったんだ。……あの頃は力になれず申し訳ないことをしたね。そのことをずっと詫びたいと思っていたんだ」
「いえ、そんな。やめてください。あなたに詫びていただく謂れなんてありませんから」
「いや、それでは儂の気が収まらんよ」
事情を知らないためどうとも言えないが、はじめは弦一郎が憤っていたように見えていた。だがいきなり尊の眼前で詫びたいと言って深深と頭を下げる祖父に対して、慌てた尊は前のめりになってそれを止めようとしている。
どちらも折れる素振りがなく、同じやり取りが永遠と続きそうな勢いだ。
基本的に温厚な弦一郎ではあるが、なかなか頑固なところがある。
極道者である尊はこれまで美桜に対してそうだったように、言わずもがなだ。
ーーそんなことより、どういうことなのか説明して欲しい。
埒があかないと判断した美桜はふたりの間に割って入った。
「あの、ふたりとも、一体どういうことなんですか? 私にもわかるようにちゃんと説明してくださいッ!」