狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
『さーせんした。あっ、ちょっ、なにすんですか? お嬢ーーいいから貸しなさいッ!』
怒気を孕んだ尊の声にヤスが謝罪してきた直後。電話の向こうが騒がしくなったかと思ったら、突如樹里の声が割り込んできた。
どうやらヤスの傍に樹里もいたようだ。
ーーなんだ。また匡となんかあったのか? だからって、俺に愚痴られても困るんだが。
大学の頃から匡と付き合っている樹里には、匡となにかあるたびに呼び出され、愚痴を聞かされてきた。
いつだったか美桜と一緒にいたとき、電話で呼び出されたのも、匡との痴話喧嘩が元凶だったのだ。
そのときのことを思い出し、ふうと溜息を零した尊の元に、予想外な言葉が寄越された。
『尊。あんた、ケジメだかなんだか知らないけど。グズグズしてる間に、若い男に美桜ちゃんとられても知らないから。嫌ならさっさと来なさい。仕事なんて匡に押しつけとけばいいから。わかったわね!』
ーー若い男ってまさか、ヤスが言ってたイケメンだとかいう医者のことか?
どういうことなのか確かめたくとも、一方的に捲し立てると同時にブチッと通話が切られてしまう。
ーーもしかして、美桜の様子がおかしかったのもその医者のせいなんじゃ。
無残にも使い物にならなくなった万年筆を放り投げた尊は、物凄い勢いで社長室から飛び出していた。