狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
そんなことを思いつつ、尊との夫婦水入らずの穏やかな時間を過ごしていたはずが……。
「けど、まだ二十歳で若いのに、子供を身篭って、本当によかったのか? やっと自由の身になって、好きなことができるようになったところなのに」
「私、母のこと、写真でしか知らなくて。だから、いつか結婚して家から出たら、早く家族をつくるっていうのが夢だったんです。それが叶って、本当に夢みたいです」
若い美桜のことを妊娠させてしまったことを悔やむように話す尊に、自分の気持ちを伝えていくうち、とうとう堪えきれなくなってしまった涙が溢れ始めた。
「こら、泣くなよ」
「……だって、本当に夢みたいなんですもん」
尊に困ったように苦笑いを浮かべて涙をキスで拭いながら咎められても、嬉し涙は余計に溢れるだけで止まらない。
それなのに、尊はここぞとばかりに、これまで美桜が知らなかった刺青のことまで打ち明けてくる。
「夢とは心外だな。昔はあんなに俺に懐いてたクセに、そのことも忘れてるし。俺はずっと忘れられなくて、刺青に桜彫るくらい、美桜のことがずっと好きだった。今も昔も。今まで言えなくて悪かった」