狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
今の美桜には、そんな母親のことが羨ましく思えてならない。
自分の名前の由来である、満開のソメイヨシノを眺めていたせいか、いつしか美桜は写真でしか知らない母親のことに思い耽ってしまっていた。
はらり、はらりと、淡い桜の花弁が舞い散る様を縁側に面した窓からぼんやりと見遣っている、美桜の周辺には、終始穏やかな愛想笑いを貼り付けている弦の隣で、さっきから楽しそうに声を弾ませている薫と、美桜の見合い相手である男性とその両親との会話が絶え間なく飛び交っている。
「休日には読書をしたり、盆栽を弄ったりしています」
「まぁ、それは素敵な趣味ですわぁ。生け花好きが高じて、今では師範として家元のお手伝いをしている美桜さんともお話が合いそうですし。おふたりとも相性がピッタリで羨ましい限りですわぁ」