狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
実際には、愼は女子アナと真剣に交際し結婚も視野に入れていたというから驚きだ。
そのことで愼を筆頭に弦と弦一郎も激怒し、すぐさま離婚を言い渡したことで、薫と天澤家の縁は完全に断たれたらしい。
電話で弦一郎からその話を聞かされたとき、初夜でのことが美桜の脳裏を過ぎった。
それは、幼い頃から美桜のことを疎んじてきた薫に対して、自分のことのように激怒し、怒りに打ち震えていた尊の姿だ。
美桜の憶測でしかないが、極道の世界から自ら退こうとしていた尊がすぐに行動に移さなかった裏には、これらの件があったからではないだろうか。
尊に訊いたところではぐらかされるだけだろう。
事実だからと言って、尊のことを責めるつもりなど毛頭ない。
悪事を働いた人間はいずれはその報いを受けるべきだと思う。
極道者だった尊にも、人には言えない後ろ暗いことだってあるに違いない。
もしかすると、尊の刺青は、そういうものを背負っていくという覚悟の表れなのかもしれない。おそらく堅気となったこれからも、背負っていかなければならないのだろう。
ーーだったら少しでも背負わせて欲しい。
弦一郎との電話の後、美桜はそんなことをひっそりと決意していたのだった。