狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
先ほど感じてしまった直感が正しかったと、美桜が身をもって実感したのは、それからほどなくしてのことだ。
薫の提案により、若いふたりーー美桜と見合い相手である佐久間《さくま》優《すぐる》だけでゆっくり話を交える席が用意されているという、高級料亭『まつや』の奥座敷へと若女将に案内された美桜は、広い部屋でひとり待たされていた。
当然、優も一緒に来るものだと思っていたのだが、仕事のことで事務所に一度連絡を入れないとならないとかで、美桜だけが通されたのである。
住み慣れた天澤家の数寄屋造りの母屋を思わせる、しっぽりと趣ある雅な和室は、奥まったところに位置するせいかやけに静かで落ち着かない。
なんだか、外の世界から隔離でもされているような心地になってくる。
入り口と縁側に面した雪見障子からも、さっきまで通されていた部屋と同じく、和風庭園を臨むことができる。
残る二面のうち一つは壁、もう片方は襖になっているのだが、その襖がどうにも気になってしまう。