狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
ーーなんだかドラマでよくある展開が待っていそうな部屋だな。もしかして布団でも敷かれていたりして。ま、まさかね。
そんなことを思ってしまったせいか、時代劇でお馴染みの、若い娘が悪代官に手籠にされる場面が脳裏に浮かできてしまう。
美桜は、慌てて頭をふるふると振って、可笑しな思考を追い払った。とその時、入り口の雪見障子が開け放たれ、そこから姿を現したのは、優ではなく、大物代議士の優太郎《ゆうたろう》だったことに、美桜は戸惑いを隠せない。
少し前に見てしまった、優太郎の厭らしくギラついた視線をまともに目の当たりにしてしまったせいだ。
「いやぁ、待たせて悪かったねぇ。美桜さん」
優太郎の声を耳にした途端に、すっかりなりを潜めていた嫌悪感と恐怖感までがぶわっと湧き起こってくる。
知らず知らずのうちに、正座を崩し、手を後ろ手についてしまっていた美桜の背中には、嫌な汗が滲んでいる。
そんな美桜の姿を射るような強いギラギラとした眼差しで見下ろしながら、後ろ手に引き戸を閉ざした優太郎は、美桜にじりじりと近づきながら、今回の見合いの真の目的を暴露しはじめた。