狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

「息子は、少々困った性癖の持ち主でねぇ。何というのかなぁ。アロマだか、ロマンチックだかなんだか知らないが。他者に恋愛感情を抱けないんだそうだよ。そこで、君に偽装の妻を演じて貰いたくてね。でもそうなると、若い君にとっては色々と辛いだろうからねぇ。ああ、安心なさい。息子の代わりに私が君の欲求をたっぷりと満たしてあげるからねぇ」

 そうしてニヤついた脂ぎった顔もそのままに、ねっとりとした視線同様、粘着質のある厭らしい声を響かせつつ、じりじりと美桜との距離をなおも詰めてくる。
 
「いやぁ、それにしても美しい。肌なんか透けるように綺麗だねぇ。こんなに若くて美しいお嬢さんをこれから意のままにできるなんて。可笑しな性癖を持った息子に感謝しないといけないねぇ」

 頭が混乱しつつも、その言葉の意図を理解した美桜は、身の危険を覚え、なんとかこの場から逃れようとするも、あまりの恐怖にガタガタと震える身体が思うように動いてくれない。

 ーーヤダッ! 来ないで!

 美桜の心の叫びも虚しく、正面に立ち塞がるようにしてにじり寄ってきた優太郎が怯え切っている美桜の頬に手で触れようとした刹那。

 バタンッという豪快な音とともに、入り口の雪見障子が開け放たれた。
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