狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
ボスらしき男の指示に従った優男が、あっさりと優太郎から手を引いたところを見計らったように、長身の男が優太郎の肩にポンと手を置く。
そうして眼光鋭い切れ長の双眸で冷ややかに見据えつつ、口元に微かな冷笑を湛え、スーツの懐から一枚の名刺らしき白い紙片を取り出し、優太郎の眼前にぴらっと放った刹那。
さっき優男を制したときよりもゆったりとした口吻で重低音を響かせた。
「なあ、佐久間先生」
途端に、辺りには重苦しい緊張感が張り詰めたような気さえしてくる。
優太郎の背後に位置する美桜から見ても、長身の男から放たれる威圧感たるや凄まじいものだった。
ーー凄い迫力。きっと、カリスマっていう言葉は、こういう人のためにあるんだろうなぁ。
長身の男の迫力に圧倒されてしまった美桜は、この場にそぐわないことを思ってしまっていた。
優太郎はその場でへたり込み、さっきまでの白々しい態度は何だったのかと思ってしまうほどに、名刺を手にしたまま、血の気の引いた蒼白い顔で呆然としてしまっている。