狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

 その声の余韻が覚めやらぬなか、長身の男がスーツの懐から悠然と取り出したスマートフォンから、優太郎がこの部屋に訪れてから三人の男らが登場するまでーー美桜が襲われそうになっていた、音声の一部始終が流れ始めたことで、優太郎の目論見は外れることとなる。

 しばし男のことを驚愕の表情で凝視したあとガックリと肩を落とした優太郎だったが。外務大臣まで務めた大物代議士としての矜持がそうさせるのだろうか。

 正面の男らのことを汚いものでも見るような目つきで見据えつつ、性懲りもなく、またもや不遜な声を響かせた。

「わかった。今後一切極心(きょくしん)会とは関わらないと約束する。これで話は済んだ。早く帰ってくれ」

 までは良かったのだが。優太郎が言い終えるのと同じタイミングで、長身の男から、部下と思しきふたりに抑揚のない淡々とした命令が下されたことで。

「先生がお帰りだ。丁重に送って差し上げろ」

「ほら、立て。行くぞ」

「はっ、離せッ! なんのつもりだッ! おいっ! やめろと言ってるだろうーがッ! 俺を誰だと思ってるッ!」

 大きな声を出し狼狽えだした優太郎がジタバタ暴れるも、慣れた様子で、優男と無言を決め込んだままの大柄の男により、両側からたやすく拘束され、部屋から引きずられるようにして強制退去させられていく。

 その様子を呆然と見守っていた美桜が気づいたときには、静寂を取り戻した広い和室で長身の男とふたりきりになっていた。

 
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