狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
そのせいなのかどうなのかは、自分でもよくわからない。気づいたときには。
「待ってください。せめてお礼をさせてくださいッ!」
立ち去ろうとする男のことを無意識に大きな声で引き止めてしまっていた。
「あんたに礼なんてされる謂れはない」
けれど男からはやはり頑なな言葉が返されるだけで、美桜はますます引くに引けなくなっていく。
「何でもしますッ!」
「そんなことを簡単に口にするな。これだから世間知らずなお嬢様は」
こんなにも頑なになって、男のスーツの袖まで掴んで引き止めるだなんて、それだけでも驚きなのに。それがまさか……。
「何のつもりだ」
「……た、助けていただいたのに、何のお礼もできないままだなんて、それでは私の気がおさまりません」
「だったら、何をしてくれると言うんだ?」
「やれと言われれば何でもします。本気ですッ!」
「だったら脱げよ」
「……え?」
「何でもすると言ったのはお前だ。だったら脱いで俺のことを愉しませてみろ」
男との間で繰り広げていた押し問答の末に、こんな展開が待っていようとは、誰が予想できただろうか。
少なくとも美桜にとっては、何もかもが思ってもみなかったことだった。