狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
「だったら脱げよ」
「……え?」
「何でもすると言ったのはお前だ。だったら脱いで俺のことを愉しませてみろ」
そこへ間を置かずに放たれた、有無を言わせないという威圧感を孕んだ男の言葉に、一瞬何を言われているのかが理解できずにいた。
だがこの日のために仕立ててもらった、春めいてきた今の季節にピッタリな艶やかな色味の雲華が描かれた振袖姿の美桜に、続け様に寄越された、男の意味深な視線と言葉とでその意図を理解した刹那、カアッと全身に滾るような熱が及んだ。
何でもすると言ったのは自分だ。今更なかったことになどできないだろう。
おそらく……否、絶対に、この男はなかったことになどしてくれないに違いない。直感的に確信した美桜はゴクリと生唾を飲み下した。
これまではただ駒としての自分に与えられた役割を果たすためだけに生かされてきた。
今日は、その駒としての役割を果たすために、格式高い高級料亭へと赴いていたはずだったのに……。
ーーこれから私は一体どうなってしまうんだろう。
美桜は混乱する頭で今更ながらにそんなことを案じていた。