狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
けれどもそれらを口にできるほどの冷静さなど、今の美桜には微塵もない。
それほどに頭の中は混乱を極めていた。
そこへ再び男の声が思考に飛び込んでくる。
「助けた礼をしてくれるんだろう?」
「……は、はいッ」
混乱しつつも、男に礼を返したいという気持ちはあるので、ほとんど脊髄反射的に返答していた。そこへ。
「だったら俺に着いてこい。飽きるまで傍に置いてやるから精一杯励め。それが嫌なら、ここに残ればいい。これまで通り、家の駒として、あの変態代議士の家に嫁に出されて、散々いいように弄ばれるだろうがな。どうするかは自分で決めろ。俺はどちらでも構わない」
間髪入れずに返された男からの言葉は、抑揚のない淡々とした声音同様、感情の一切こもらない、冷淡ともとれる決然としたものだった。