狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
一歩間違えれば、相手に脅迫されているととられかねないものだ。
この男が自分の置かれた状況を把握していることにも驚かされたが、そんなことよりも、これからの自分の行く末を第三者に突きつけられ、どうにもやるせない心持ちになってくる。
けれどもどういうわけか、この男の纏っている独特な雰囲気に圧倒されはしても、嫌悪感も恐怖感も、まったく感じられない。
さっきこの男が立ち去ろうとするのを引き留めようとした際にも、そうであったように。
どこか懐かしさを感じてしまったこの男と、このまま別れてしまうのが嫌だと心が訴えかけてくる。
もしかしたら、ただ単純に、貞操の危機を救って貰ったからかもしれないし、優しい表情と無邪気な笑顔を見てしまったからかもしれない。
でも、初対面で名前さえも知らないこの男に、このまま縋っていいものかと躊躇してしまう気持ちだってある。
なのに、これまで自分の意思を通したいと思ったことも、意思を問われたことさえもなかった反動だろうか。
少々強引ではあるが、どうしたいかをちゃんと自分の意思で決められるように導いてくれている。
美桜にはそう思えてならなかった。