魔法の手に包まれて
「焼き上がると、どのくらい小さくなるんでしょうか?」
 もっともな質問である。

「だいたい、八割だと思ってください」
 彰良が答えた。
「見本は、こちらに並べておきますので」
 見本とは焼き上がり前後の大きさの見本だ。やはり、同じような質問はどこでも受けるのだろう。

「ありがとうございます」
 雄太の母がにこやかに答えれば千夏もほっと安心する。このクラスの保護者がまとまっているのも、彼女のおかげのようなところがあるからだ。

「他に、質問とかありますか? なければ、早速みんなでお皿やお茶碗をつくりましょう」
 千夏が言えば、子供たちがわーきゃー騒ぎ出す。カレーのお皿をつくりたい、とか、お母さんとお揃いで作りたいとか。

「型抜きも準備してありますから、ご自由に使ってください」
 彰良が声をかけるが、すでにその声は子供たちの耳には届いていない。粘土をこねて伸ばして、と自分たちの作りたいお皿の作業に取り掛かっているから。

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