魔法の手に包まれて
「みんなー。お皿を作る時間は、短い針が十、長い針が六になる、十時三十分までです。それまでにお皿のかたちをつくってくださいね。前に、お星さまやリボンのいろんな形があるから、使いたい人は自由につかってください」

 子供たちは不思議なことに千夏の声には反応するようだ。はーい、はい、とばらばらに返事をする声が聞こえてきた。彰良もこれには苦笑を浮かべるしかない。
 陶芸は得意だが、子供たちの扱いは苦手だ。

 彰良はゆったりと遊戯室内を歩いていた。夢中になって粘土をこね、伸ばして、形を作っている子供たちの様子を眺めている。むしろ、それしかやることが無い。
 同じように千夏も子供たちの様子を見ているし、園長はカメラ片手にその様子を写真に収めようとしている。
 なぜか彰良は子供たちの様子ではなく、子供たちの様子を見守っている千夏に視線を向けていた。困った顔をしている園児も、不機嫌な顔をしている園児も、千夏が声をかければその顔がぱっと輝く。子供が苦手な彰良にはできない芸当だと思いながらも、どこか千夏から目を放せずにいた。

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