魔法の手に包まれて

「あきら先生、今日はありがとうございました」
　千夏が言えば。
「ありがとー、ございましたー」
　と合唱のように言葉が続いた。

「今日は、みんなと作品を作ることができて、とても楽しかったです。みなさんの大事な作品をお預かりします。今日はありがとうございました」
　千夏のような話し方を真似してみた。
　一人の保護者が拍手をすれば、それに倣う子供たち。

「先生。どうぞ、お茶でも飲んでいってください」
　彰良は園長に促され、職員室へと向かった。園児たちは、十一時十分には帰るらしい。少し、千夏と話をする時間はとれそうだ。
「先に、こちらの作品を車に持っていきますね」
　この園長と何を話したらいいかよくわからないから、そう言って逃げてみた。
　子供たちが作った大事な作品を壊れないように、壊さないようにと、ゆっくりと車に積む。途中、急ブレーキを踏まなければならないような状況に陥ったとしても、例えば目の前を鼬が横切るとか、そんな状況に陥ったとしても、この作品だけは守らなければならない。だから、最悪の状況を考慮しながら、車に積んで、タオルで包み、ロープでとめる。