魔法の手に包まれて
 その言い方が、悪戯を仕掛けた子供が「内緒だよ」と言っているような言い方であったため、千夏はくすりと笑ってしまった。
「残念ながら、今日は焼き芋を焼いていないのですが」

「あ、いえ。その、焼き芋に期待したわけではないのですが。あ、それよりも、これ。少しですけど、おやつです」

「では、お茶を淹れましょう。コーヒーと紅茶、どちらがいいですか?」

「そうですね。このお菓子に合わせるなら、紅茶をお願いしてもいいですか?」

「はい」

 やはりこういったトタン屋根で、サッシ窓で、床がコンクリートでできているような工房は底冷えがする。小学校で使うようなちょっと大きめの石油ストーブも、二台ほど置かれている。ということは、入口にあるあちらのストーブは、お湯を沸かすためと焼き芋を焼くためのストーブなのだろう。なぜなら、圧倒的にこちらの二台のストーブのほうが大きいし、燃費がいいから。

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