魔法の手に包まれて
 涙は止まったようだ。そこで千夏は、少し冷めた紅茶を一気に飲み干した。

「新しい紅茶を淹れましょう」
 空になったカップに視線を落とした彰良は、もう一度紅茶を淹れるために席を立つ。ティーポットにお湯を注ぎ、蒸らしてから千夏のカップに注ぎ入れた。
 ふわん、と湯気が立ち昇り、そして消えていく。

「熱いですからね」

「はい」
 返事をしてから、ふーふーと息を吹き付け、そして一口飲む。先ほどとは違い、熱い液体が口の中を満たし、喉元をじりりと刺激しながら流れていった。

「あの、くだらないと思われるかもしれませんが。私の話を聞いてもらってもいいですか? あ、いえ、やっぱり、いいです。今日はその、作品を取りに来ただけなのに。先生の優しさに甘えてしまいました」

「甘えてもいいですよ?」

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