魔法の手に包まれて
「え?」

「先生の愚痴を聞く相手です。むしろそれで先生の背負っているものが軽くなるのであれば、喜んでその相手を務めさせていただきます」

「ですが」

「ええ、もちろん裏心はありますよ」

「裏心……」
 千夏の心臓はバクバクと鳴っている。薬缶はシュンシュンと鳴いている。
 彰良は視線を逸らすことなく千夏を見つめてくる。千夏は何かを言おうとしたけれど言葉が出てこない。まるで陸揚げされた魚のように、パクパクと唇を震わせている。

「ここにはたくさんの方が訪れてくれるのですが、このような気持ちになったのは初めてなんです。なぜだろう、と自分でも不思議でした。きっと、先生は私に似ていて、私に持っていない物をもっているからだ、と。今、話を聞いて思いました」

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