魔法の手に包まれて
 千夏は、幼稚園教諭になって二年目。新卒採用になって、今の年長児が入園したタイミングでその子たちのクラス担任となった。
 人数の少ない幼稚園であっても、それなりに苦労というものはある。一番若いんだからパソコンは得意でしょ、というわけのわからない理由で、デジカメで撮影した写真の編集をさせられたり、幼稚園の園便りも最後の仕上げをやらされたり、と。
 さらに昨年の卒園式。初めての卒園式で感慨深く、不覚にも大泣きしてしまった。卒園児の保護者からは「先生、初めてだもんねぇ」と温かい言葉をもらったけれど、園長からは「もう少し自重しなさい」と指摘を受けてしまう始末。涙腺のスイッチがあるならば「閉」にしておきたい、と思うくらいに。

「五人という人数でしたら。こちらの工房で引き受けますよ?」

「園児の保護者も一緒ですので、人数はその倍になるかと」

「もちろん、さすがに私一人で怪獣五人、ではなかった、可愛らしい園児たち五人に指導するのは難しいですから。そこは、その子たちのお父さんなりお母さんなりに手伝っていただけると、作業はスムーズになるかと思います」

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