魔法の手に包まれて
「そうですか、幸せになれば欲は無くなるんですね?」

「いいえ。幸せだからこそ、欲が出るんですよ。あなたを自分のものにしたいっていう」

「だから、そういうことではありません。さ、早く行きましょう。今日は変わった作品も見ることができると聞いて、楽しみにしてきたんですよ。彰良さんの作品もあるんですよね」

「ええ。知人に頼まれて、三つだけお渡ししました」

 早く行きましょう、と千夏は彰良の腕を引張っる。彰良はしぶしぶといった様子でのそのそと歩き出すのだが、掴まれている腕を解けば、彼女の手をしっかりと握りしめる。

「よ、彰良」
 ひげ面の四十代くらいの男が、陽気に手を上げながら声をかけてきた。
「お、こっちがお前のご自慢の彼女さんか」

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