短編集(練習)
僕達がきたのはこの町で一番の危険地帯。
プロの殺し屋達が集いに集って、一般人、兵士を惨殺をする危険地帯マロー。
マローだけは行ってはいけないと母に教わったばかりなのにこんな形で縁があるとは。
もはや神に「死ね」と遠回しに言われている気分だ。
周りの風景を見るだけでも空気がピリピリと張り詰めていた。
無数の殺気を感じる。
こんな所に沢山の子供達を置いて、早々と敵国の兵士達はどこかへ行ってしまう。
もちろん僕達には一切武器など持たせずに。
子供達は無数のその殺気を感じ始めたのか、その場で泣き出す者もいて、あるものは早く物陰に隠れ始める者がいた。
「さぁ……俺達はどうしようか」
ギュッと握りしめた手が震えていた。
ーーユージオ、怖いんだな……でもこうしていなければ自分自身に起きた出来事を肯定する事が難しいのかもしれない。
子供ながらにそう思った。
強がっていなければ、この世は生きられない。
それを彼は身にしみてわかっているのだろう。
彼は多分相当な修羅場をくぐってきたのかもしれない。
両親が死んだ以上にもっと。
「とりあえず物陰に隠れよう。ここじゃ危ない」
そう僕が話すとユージオは「わかった」と言って僕の手を引く。
その瞬間だった。
ーーバゴーンッ!!
僕の頭に勢いよく何が当たる。
ボールを当てられたみたいな感覚だった。
何かの威力が強すぎて後ろへ思いっきり背中を打ち付ける。
ユージオが倒れた僕を抱き抱え「大丈夫か!?」と。
「うん……?あれ……僕生きてる?」
クラクラした頭を抱えて、ふとユージオの足元を見た。
そこに見えたのはピストルによく使われる玉……銃弾だと言うことに気づくのはものの数秒。
「どうしてこんな所に銃弾が……?」
ユージオも僕の言ったことに反応して答える。
「おかしいな……確かここには銃弾なんて、さっきなかったのに……?」
その言葉の次の瞬間また銃声が聞こえた。
ーーバゴーンッ!!ダダダッ!!
その音につられるように、ユージオの体が痙攣した。
ゆっくりと倒れるユージオ。
体からは無数の黒煙が。
ーーユージオが撃たれた。
頭の中に鋭いそして黒い感情が。
それはすなわち「死の恐怖」。
自分は死にたくない。
ユージオを置いてどこかへ逃げてしまいたい。
そんな弱い心が僕を支配したがーー。
「いったぁ……。なんだいきなり打ってきて……ってあれ?ってえ!?」
なんと明らかに大量に生まれたはずのユージオが何食わぬ顔で起き上がったのだ。
また僕は足元を見る。
手のひらサイズの銃弾が数十個ゴロゴロと落ちていた。
素早くそれを数えた後、銃弾の一つを摘む。
銃弾に油がギットリとついている。
ーー銃弾に、油?
ーーそれにユージオは明らかに打たれたはずなのになぜ生きてる?
致命傷の傷を負った証拠だと言わんばかりに、ユージオの軍服は穴だらけだった。
だけど体は何ともなっておらず血さえ出ていない。
「……わかった、わかったぞ」
ユージオがギトギトになった銃弾を握りしめていった。
「多分俺達は実験されてるんだよ」
急激な展開に頭が理解できない。
ーー実験されてる?
「どうゆうこと?」
「そのまんまの意味さ。俺達服を脱がされて、謎の油を大量に浴びせられただろ?」
「それがどうかしたの?」
「その油実は特別な油なんだよ。
ピストルやライフルで打ってきた攻撃を食らっても無傷になる特殊な性質を持ってる。
そうじゃ無いと明らかに辻褄が合わない。
だって俺達明らかに打たれたのに、こうして生きてるなんておかしいからな。
それにほら、そこに油まみれになった銃弾があるだろ?
これ実は自分の体についた油が洋服に染み込んで銃弾が洋服に触れても、ツルツル滑って体には貫通しないように出来てるんだよ。
それを俺達みたいな身寄りのない子供を実験台にして軍用にするべくこうして利用してるんだ。
そうじゃなければ、目隠ししたり窓のない軍用トラックなんぞ使ったりしない。個人情報の漏れを防ぐために、あんな閉鎖的な空間に俺達を閉じ込めたりしてるんだ。
絶対そうだ」
洋服は打たれた後だらけなのに、体が無傷なユージオが言うと妙に説得力が増す。
にわかに信じられなかったが、「本当なのかも」なんて思い始める。
「とにかくこの地域から出よう。どちらにしろ無敵状態でも、子供の力じゃ戦えない」
僕はこくりと頷くと、ユージオについていく。
雨のように降り注ぐ銃弾に当たりながら大通りを走っていく僕達。
銃弾が当たる感触は、ドッチボールで強いボールに当たった感触だ。
確かに痛い感じもするけれど、本当の打たれた痛みに比べればこのぐらいの痛さなんて序の口だろう。
やっと大通りを抜けて、国境を抜けようとしたその時だった。
数メートル先、大きな爆発が。
急いで止まった僕達。
煙に巻き込まれて、視界が見えなくなるがしばらくすると煙が晴れてーー。
「あっ……アレッ!!」
目の前に見たのは、同じ軍服を着た子供達だ。
爆発で数メートル吹き飛ばされたのか、グッタリと横になっている。
「きっとアイツも死んでない。何故ならあの油を浴びたからな。行こう。仲間は多いほうがいい。助けよう」
死んだかもしれないと言う固定概念に囚われていた僕は、ハッとして目を覚ます。
ーーそうだ、僕達はあの特殊な油を浴びているんだった。どんな攻撃にも耐えられる油を。早く助けなきゃ!!
そんな期待を胸に、仲間を助けようと倒れている子供に近づいていくとーー。