離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
プロローグ
最初に目に入ったのは、朝日に照らされた白い桜だった。
ソメイヨシノとは違う、白い八重桜──
それが窓越しに、ちらちらと花を零していた。
私は身体を起こす。
さらり、と布団が肩から落ちて、慌てて私は胸までそれを引き上げた。
お腹の奥に、快感の余韻が鈍く残っている。
私はちら、と目線を動かした。
私の横で、眠る彼──
一晩中、私を手放さなかった彼を。
でも、彼の行為にきっと愛はない。
愛どころか、ありとあらゆる、一切合切の全ての感情が──そこにはない。
あるとすれば……そう、同情か。
私は熱に浮かされたように、彼に揺さぶられた昨夜の記憶を反芻しながらそう思う。
身体の芯がとろけ落ちそうな感覚と──
まっすぐに、射抜くような瞳で告げられた、彼からの言葉とを。
『──子供だと思っているのなら、こんなふうにきみを抱いたりしない』
そう言って、彼は私の唇にキスを落とした。
触れるだけのものを、何回も──
それはやがて深くなり、別の生き物のような彼の舌が私の口の中を蹂躙していく。
内頬の粘膜を舐め、歯列をなぞり、上顎を舌先で突いて──
堪らずに喘いだその声すら、彼の口の中に閉じ込められてしまうほどに深いキスだった。
ああ、
好きと、言えたなら。
私は隣で眠る、愛おしい男性の髪をそっと撫でた。
まだ何も知らなかった真っ白な子供の頃、十七歳だった私の初恋。未だに続いている初めての恋。
永嗣さん。
あなたの色に、染められたなら。
そんな幸せはないのに。
(でも)
私は思う。
暴走しそうな恋心にセーブをかける。
勘違い、しちゃいけない。
彼の端正な眉目も。
男の人らしい首筋も、喉仏も。
硬い胸板も、その奥にある心も──なにひとつ、私のものじゃない。
(だから)
私はもう何度も自分に言い聞かせ続けている言葉を繰り返す。
だから、この行為に愛はない。
私たちは、契約上の夫婦。
ただ、それだけなのだから。
ソメイヨシノとは違う、白い八重桜──
それが窓越しに、ちらちらと花を零していた。
私は身体を起こす。
さらり、と布団が肩から落ちて、慌てて私は胸までそれを引き上げた。
お腹の奥に、快感の余韻が鈍く残っている。
私はちら、と目線を動かした。
私の横で、眠る彼──
一晩中、私を手放さなかった彼を。
でも、彼の行為にきっと愛はない。
愛どころか、ありとあらゆる、一切合切の全ての感情が──そこにはない。
あるとすれば……そう、同情か。
私は熱に浮かされたように、彼に揺さぶられた昨夜の記憶を反芻しながらそう思う。
身体の芯がとろけ落ちそうな感覚と──
まっすぐに、射抜くような瞳で告げられた、彼からの言葉とを。
『──子供だと思っているのなら、こんなふうにきみを抱いたりしない』
そう言って、彼は私の唇にキスを落とした。
触れるだけのものを、何回も──
それはやがて深くなり、別の生き物のような彼の舌が私の口の中を蹂躙していく。
内頬の粘膜を舐め、歯列をなぞり、上顎を舌先で突いて──
堪らずに喘いだその声すら、彼の口の中に閉じ込められてしまうほどに深いキスだった。
ああ、
好きと、言えたなら。
私は隣で眠る、愛おしい男性の髪をそっと撫でた。
まだ何も知らなかった真っ白な子供の頃、十七歳だった私の初恋。未だに続いている初めての恋。
永嗣さん。
あなたの色に、染められたなら。
そんな幸せはないのに。
(でも)
私は思う。
暴走しそうな恋心にセーブをかける。
勘違い、しちゃいけない。
彼の端正な眉目も。
男の人らしい首筋も、喉仏も。
硬い胸板も、その奥にある心も──なにひとつ、私のものじゃない。
(だから)
私はもう何度も自分に言い聞かせ続けている言葉を繰り返す。
だから、この行為に愛はない。
私たちは、契約上の夫婦。
ただ、それだけなのだから。
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