離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
まだ引っ越したばかり、それも急な引っ越しだったせいでまだ荷解きをほとんどしていなかったらしい。
お陰で作業は最小限に押さえられ、最後のひとつを段ボールにしまおうと手に取り、思わず声にした。
「──これは」
「あ、それは友達からもらった寄せ書きで」
少し嬉しそうに彼女が答えた。丁寧に額に入った色紙の寄せ書きが、シングルサイズのヘッドボードに飾られていた。
学生時代のものだろう、沢山の写真と一緒に「風香お誕生日おめでとう! 0420」のメッセージ……
「今日じゃないか」
「あ」
風香がきょとんと色紙を見つめた。それから困ったように笑った。
「本当ですねー……」
俺は胸が痛い。
風香は、本来ならばもっと素敵な誕生日を迎えていただろうに。
胸がギュッと痛む。
どうしてだろう。
笑って欲しかった。幸せそうに。
だから──俺は彼女の手を取り、提案する。
「指輪を買いに行かないか?」
きょとんとする風香に向かって、続けて言う。
「婚約指輪を──贈らせてもらえないだろうか」