離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
風香はしばらく逡巡したあと、ぱっと俺を見上げ、そのまま唇を重ねてきた。
一瞬だけ重なる、子供のような口づけ。
なのにとても甘くて蕩けそうで──
離れた風香の瞳がとろりと揺れる。
白い肌をこれでもかというほどに頬を、いや首まで赤くした風香。
そっと顔を近づけた。ちょん、と鼻の頭がくっつく。お互いの鼻の高さ分の距離で、見つめ合う──
そのまま今度は俺から唇を重ねた。
重ねるだけのキスを何度も繰り返す。触れては離れ、角度を変えてまた重ねては離れて。
「……っ」
甘い息を吐き、風香が俺のシャツをきゅっと握る。それを合図にするように、彼女の口内へ舌を捻じ込んだ。びくりと肩を引く彼女の肩を引き寄せ、後頭部を支え口の中を蹂躙していく。
形の良い歯の裏を舐め、歯茎をなぞり、内頬の粘膜の柔らかさを堪能する。
風香が戸惑い、重ねた唇がわななく。
上顎の口蓋を突くと、明らかに風香が反応した。舌先で撫でて、また突いて。
「っ、……はぁ、っ」
どう息をしたら良いのか分からない彼女が喘ぐように呼吸する。可愛く動いた彼女の舌を己のもので絡め取り、ちゅっと吸う。
風香から漏れた悲鳴にも似た嬌声すら、自らの口内に閉じ込めてしまう。頭蓋に直接響いているような甘い声。
じきに彼女が力をくてんと抜いた。支えながら唇を離す。つう、と繋がる銀色の糸。口元をぺろりと舐めてやると、風香が俺をとろりとした視線のまま見つめる。
あまりにも婀娜な目線。
こんな目をするおんなが、子供なものか。
残り少ない理性が蕩け落ちていく。
首筋に唇を寄せ、ちゅっと吸い付く。風香が肩を揺らし、俺にしがみついた。
唇を離す。白い肌に咲いた赤い華、所有の証。
ネクタイを緩め、腕時計を外した。ローテーブルにそれを置く。硬質な音が部屋に響く。
「きみに触れたい」
耳元で告げる。風香の喉がわななき、言葉の代わりに小さな頷きが与えられた。福音のようにすら思う。