離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
翌日には永嗣さんは本当にうちのお母さんに会ってくれて──それだけでなく、食堂のローンを全部返すと言ってくれた。
お母さんはめちゃくちゃ恐縮して断り続けていたけれど、永嗣さんの「実はうちの親戚がうるさくて」の言葉に口をつぐんだ。
「それくらいの甲斐性もないのかと責め立てられてしまいます。結納金だと思って受け取っていただけませんか?」
お母さんは散々悩んだあげく、絶対にお返ししますと文書をしたためた。手書きの借用書だったけれど、永嗣さんは黙って受け取ってくれた。
「なかなか頑固だな、きみのお母さん。そっくりだ」
「そ、そうですか?」
「返す必要はないと言っても聞いてくれなさそうだ。とりあえず受け取って、ちょっとずつお店の修繕費などとしてまたお義母さんに返すのでどうかな」
さてどうしようか、と永嗣さんは本気で悩んでいるふうだった。まるですぐには離婚しないような、……ずっと私と夫婦でいるような台詞に私は惑う。
さらに翌日の月曜には、お昼間のうちに弁護士さんが戸籍謄本をとってきてくれて、夜には婚姻届を提出した。
「俺の奥さん」
満足げに永嗣さんは言って私の頬を撫でる。
(よっぽど……政略結婚したくなかったのかな)
私は頬が熱くなるのを意識しながら、ただ彼に甘やかされるのに任せる。
その日も、夜遅くまで彼は私を抱いた。
落ちてくる甘いキスに心がざわつく。
愛おしさで死んでしまいそう。