離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~

「ど、どういうことなんだね!?」

「ですから、結婚しました。昨日、婚姻届を提出して……その、退職も考えています。時期は係長と相談をして……」


 苗字も主人に合わせました、と職員用データベースに入っていた、結婚時の人事提出用異動届けを矢田次長の机にそっと乗せる。
 矢田次長はそのA4サイズの用紙を両手で引き裂かんばかりに握り、厚い唇をわななかせ喚いた。


「す、砂田様にはどうお伝えするんだね!」

「……何度もお伝えしていることですが、私と砂田様には、行員とお客様という関係以外にはありません」

「いや……いやいやいやいや!」


 イライラと矢田次長は髪をかきむしる。


「そういう問題じゃないんだ! 大体ねえ、砂田様に見染められたのだから大人しく従っておけばよかったんだ!」


 次長は舐めるような目つきで私の頭から爪先を眺め、それから嫌な感じに目を細めた。


「そもそもさあ、君から誘ったんじゃないのか〜?」

「……っ!」


 あまりの言いように言葉を失う。
 泣きそうになった私に、ため息とともに次長は「仕事に戻りたまえ」と嗤いながら言ったのだった。


(……なんであんなに次長は砂田さんに肩入れするんだろう?)


 次長室のドアを閉めながら、私はざらつく違和感に首を傾げた。
 いくらなんでも、異常……だよね?

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