離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
そう思っていた翌日、いきなり砂田さんが窓口にやってきた。
どうしよう、と思ったものの、仕事の話だったからどうしようもなく。ただひたすら、ネチネチと嫌味を言い続ける砂田さんに耐え続けた。
「……疲れた……」
砂田さんから出された無理難題のせいで大幅に残業した私は小さく呟きながら、裏口を薄く開ける。あたりを見回して、……営業時間外だというのに駐車場に謎の黒い車が止まっていて、首を捻る。
「誰のだろう……?」
ついひとりごちた瞬間、鞄の中でスマホが震えた。慌てて確認すると、永嗣さん。
「どうされました?」
『すまない。今日迎えに行けそうにないから、代わりを寄越してる。駐車場にいないか?』
「あ」
あの車か。
安心してドアを大きく開くと、瞬間に話しかけられた。
「奥様」
「ひゃいっ!?」
びっくりして肩を揺らす。至近距離に、なんだかスーツ越しでも筋骨隆々なのが分かる殿方が、おふたり……いつのまに!?
「徳重警視の奥様ですね」
「は、はい……」
耳を当てたままのスマホから『気をつけて』と永嗣さんの声。頷きながら通話を切るけれど……混乱していた。迎えって……この人たち、警察官?
(い、いいの? 私なんかを護衛……っていうのかな? そんなことして……)
税金の無駄遣いなんじゃないだろうか。
促されるままに例の黒塗りの車の後部座席におさまる。
そんな私に、ふたりは名刺をくれた。
「警視庁警備部警護課第四係……?」
ふたりの所属を読み上げる私に、運転してくださっているひとりが「いわゆる」と口を開いた。
「SPです」
「えふっ」
復唱しようとして、噛んだ。