離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
まあ結局のところ、さんざん喘がされて気持ちよくされてとろんとまた眠ってしまって──目が覚めたら、もう三時過ぎ。
雨は止んだようで、薄曇りの白い空が広がっていた。
「行こうか」
永嗣さんが私の頭を撫で、さらさらと髪がシーツに落ちていく。その髪をひとすくいして、永嗣さんは口元に寄せた。
心臓がきゅっ、と痛む。
あんまり私のこと、大切にしすぎないで欲しい。
好きになりすぎてしまうから。
誘われるままに着いて……というか、車に乗せられて一時間半ほど。連れて行かれた先は、郊外にあるグランピング施設だった。湿った木々の香りが清々しい。
もう連絡してあるから、と駐車場から直接コテージに向かう。
「……わあ」
コテージといっても、いわゆる山小屋のような感じではなくて……
屋根が幾何学模様状になったドーム型のコテージ。テラス側から半分の壁と天井が強化ガラスでできていて、かなり見晴らしがいい。
十人以上泊まれるような広い室内には、大きなベッドがふたつ、離れたところにラグが敷いてあって、ベッドにもなりそうなソファまで置いてある。廊下で繋がった離れには、キッチンやシャワールームなどの水回りも完備されているそうだ。
「テラスと反対側に露天風呂もあるから、あとで入ろうか」
私はこくこくと頷いた。嬉しすぎて言葉が出ない。
かなりテンションが上がってしまっている。だって、旅行自体めったに行かないのに、こんなに素敵なところに泊まれるだなんて、温泉まであるだなんて!
天井からは夕焼けのオレンジに染まる空がよく見えた。日中降った雨で残った水滴が、ビーズのようにきらりと煌めく。
「雨が上がって良かった」
永嗣さんが安心したように呟く。
「ですねー……すっごく綺麗」
思わずガラス越しの空を見上げながら返事をして、続けた。
「でも、どうしてグランピングに?」
「ん? そうだなあ、焼いた肉が食いたくて」
永嗣さんが笑って肩をすくめる。山の景色が見渡せる木製のテラスには、バーベキューのグリルなんかが既にセットしてあった。
「好きなんですか? キャンプとか」
「時々な。ひとりだとテントを張れるようなところに行くけれど」
「えっ、行ってみたいです」
ついそう口にして、すぐに後悔した。
だってじきに離婚するのに──私は何を言っているんだろう?
なのに永嗣さんは微笑む。
「夏になったら行こうか」
「……いいんですか?」
「もちろん。毎年でもいい」
私はぽかんとしてしまう。
毎年?
永嗣さんはすっと目線をそらして、私のこめかみにキスをする。
そのまま耳を噛まれて、耳殻を舐められて──思わずしがみついた私は半ば叫ぶように言う。
「え、永嗣さん、ここ丸見え……っ」
「独立したコテージだから、見える距離には誰もいない」
くっ、と笑って彼は言う。私は彼の指と唇で蕩かされながら、男の人ってみんなこんなに元気なのだろうか、と思う。