離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~

 その日の、夜。
 もう明け方に近いような、そんな時間──私は主寝室ではなく、最初に与えられた自室のベッドで眠っていた。
 そんな部屋のドアが開く。
 ぱち、と目を覚まし常夜灯の灯りの中、そちらを見ると──永嗣さんが立っていた。
 シャワーを浴びたのだろうか、Tシャツにハーフパンツというラフな格好で、まだ少し髪が湿っていて。


「起こしたか」


 申し訳なさそうな声の永嗣さんを、半分眠りかけている視線で見つめる。
 夢か現か、分からない。
 ただ、手を伸ばした。
 そうした方がいいような気がして。
 永嗣さんがベッドにゆっくり入ってくる。セミダブルの、いつもより小さなベッド。
 ぎゅう、と抱きしめられた。


「お疲れさまでした」


 そう小さく言う。


「──うん」


 いつもより、少しだけ幼い声……な、気がする。
 私はなんだか胸がきゅんとなって、彼を抱きしめ返す。


「ありがとう、ございました」

「ん?」

「助けてくれて」


 永嗣さんがぴくりと肩を揺らす。その腕にぐっと力がこもる。


「風香」

「なんでしょうか」

「このまま眠っていいか?」


 きみを抱きしめたまま──
 永嗣さんの言葉に、ゆっくりと頷く。


「おやすみなさい」

「おやすみ」


 よほど疲れていたのか、永嗣さんからはすぐに健やかな寝息。
 私は薄暗い部屋の中、その整った寝顔を見つめて──それから彼の喉元に、触れるだけのキスをした。


「大好きです」


 小さな小さな声でそう告げて、私も彼の腕の中、ゆっくり眠りに落ちていく。
 ふたりで眠りに落ちていく。
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