離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~

 俺は彼女の指に自らの指を絡めて、彼女の唇にキスを落とす。
 いや、落とすなんてものじゃない。
 むしゃぶりつく、と言ってもいいかもしれない。

 舌を絡めて誘い出し、甘噛みして吸い上げる。啄むように唇にキスしては、また口内を舌で蹂躙して。

 風香の手のひらが、じんわりと湿る。
 緊張か興奮か、あるいは両方か──
 彼女の身体の中心もまた、とろとろと蕩けて俺を待っている。

 どんな神の采配か、俺は彼女の最初の男になることができた。

 願わくば、最後の男にもなりたい。

 風香の身体を余すことなく知っているのは、未来永劫俺だけがいい。


「──だめだ」


 唐突な俺の言葉に、風香がトロンとした顔で俺を見上げる。


「一人暮らしの男の家になんか、妻をいかせられるか」

「……え、でも、ヒロくんは」

「他の男の名前を呼ぶな」


 どろどろと嫉妬が溢れてくる。


「きみは誰の妻なんだ」

「え、永嗣、さんの……」


 蕩けそうになりつつも戸惑う風香に、苛つきと愛おしさが同時に湧く。


「分かっているなら」


 かり、と唇を噛んだ。
 甘く、けれど噛み切らない程には強く。


「俺以外の男の名前を呼ぶんじゃない」


 べろり、とその唇を舐め、啄む。
 風香が「でも」とそれでも抗おうとするから──俺は彼女をソファに押し倒してしまう。


「分からせてほしいみたいだな」


 時計を外して、ローテーブルに置いた。ネクタイをしゅるりと外す。風香の手首にキスをして──その白い手首にネクタイを結ぶ。


「……あ」


 風香が俺を見上げる。
 形の良い唇が戦慄く。頬は真っ赤で、眉はきゅっと寄って──その瞳は、期待に満ちて潤んでいた。


「どうする?」


 俺の言葉に、風香は小さく「いじわる」と呟く。


「分からせて──私が、あなたのものだって」


 鼓膜が蕩けるかと思うほど甘い声。
 俺の理性は、今度こそ焼き切れて。
< 64 / 84 >

この作品をシェア

pagetop