離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
「え、永嗣さ……」
「違う風香」
何もないのに焦ってしまう俺に、ヒロくんが抱きつく。
「風香ちゃん、旦那さんアタシにちょーだーい」
「だ」
風香の頬が真っ赤に染まる。それから俺とヒロくんの間にむぎゅっと入ってきて、彼をぐいぐいと押した。
「だめ、ヒロくんでもだめ。永嗣さんだけはあげられないの!」
俺は──ハッと息を呑んでしまう。
嫉妬して、くれたのだろうか?
つまり、それは──脈があると思っていいのか?
ヒロくんが楽しげに笑う。
「もおお、じょーだんよぉ。可愛い従妹の旦那さん取ったりしないってえ。ほんっとにラブラブなのね、ご馳走様」
「らっ、ラブ……っ!? そんなんじゃ、そんなんじゃないよヒロくんっ。揶揄わないでってば!」
「ふふ、なに恥ずかしがってるのよお。それより結婚式のメイクはアタシに任せてよねえ?」
ニヤニヤするヒロくんと目が合う。俺はただ、真っ赤になった顔を風香に見られませんようにと、その形のいい頭を見下ろしながら祈る。
こんな余裕のない格好悪い顔、見させられるか。
嫉妬されて嬉しいなんて──