離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
勢いよく言葉にしたのがなんだか恥ずかしくて、私の声はどんどん尻すぼみになる。
うう、なんか変なこと言っちゃってる気がする……!
けれど徳重さんは形の良い切れ長の目で私をじっと見て、それから嬉しそうに「お巡りさん」と繰り返した。
「……?」
なんで嬉しそうにしているんだろう?
「いや」
私の疑問が分かったかのように、徳重さんはその大きな手で口元を押さえてから言った。
「お巡りさん、でいられているのが嬉しくて」
「……? お巡りさんではないんですか、徳重さん」
「ああ……ではその辺りも説明しようか。乗って」
徳重さんはそう言って、自然に助手席のドアを開けてくれた。
私は緊張しながら彼の車に乗り込む。ほどなく彼が運転席に乗り込んだ。
「け、警察車両に乗るの、初めてです」
きょろきょろと車内を見回す。上品なレザーシート、内装にもこだわっているのかどれも上質なものだと分かる。……これ本当に警察車両? 無線とか、そういうの付いてないのかな?
「これは俺の私物だ。今日は有給なんだ、多少仕事はしたけれど」
「え」
運転席にいた徳重さんが、そう言いながら私に身体を向けた。彼が私に向かって手を伸ばす──ものすごく近くに、徳重さんの体温を感じる! まるで、キス、するかのような姿勢で!
(な、なになになに!?)
目の前に、徳重さんの整った横顔が見えた。近づけば余計に上質と分かるスーツ。落ち着いた深い赤系のネクタイ……硬直している私の耳に入ってきたのは、……シューっという何かを伸ばす音と、カチャン、と何かを嵌める音。
「あ」
徳重さんが私のシートベルトを着けてくれたのだ、と気がつく。徳重さんはなんて事もない顔をして運転席に座り直し、自らのそれも着けてしまう。
「す、すみせん-…」
頬が熱い。発火しちゃうそう……
キスだなんて、なんて自意識過剰……!