離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
11(風香視点)
 目が覚めて──ぼうっとする頭であたりを見回す。
 私の、部屋だった。
 永嗣さんと結婚する前、少しだけ住んでいた。
 引き払ったはずの……


(夢だった?)


 私はモヤがかかったような意識の中、考える。全てが夢だった? 永嗣さんと結婚したことも……?


(そりゃそうだよね、あんな素敵な人が私みたいな人間を一時とはいえ伴侶に選ぶなんてことが……)


 自嘲しながらズキズキ痛む額に触れようと手を上げて、その左手薬指に目が止まる。
 婚約指輪。
 永嗣さんがくれた、婚約指輪──!
 意識がはっきりしていく。


(そうだ、私、攫われて……!?)


 ばっと身体を起こす。恐怖で固まりそうになりながら、あたりを見回した。

 カーテンも、テレビも、ローテーブルも、チェストも、ベッドも、シーツも、枕もなにもかも、引き払ったはずのあのワンルームの部屋と同じ。窓から見える風景さえ。

指先が震える。


「起きたんだね」


 きぃ、と玄関のドアが開く。

 私は声の主──植木博正を震えながら、それでもなんとか睨みつける。

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